動物や人類にとって、無くてはならないコラーゲン。そのコラーゲンは人間の体に対して、どのような役割をもっているのでしょう。それをここで紹介していきます。
コラーゲンは細胞がしっかりとくっつくための足場や、骨組みになって形になるためには欠かせないものです。細胞と細胞の間を単につめるだけのものではありません。
建物で言うならば、壁や鉄すじにあたります。コラーゲンが太いロープ状から細い糸のように色々な形になり、それが網目や織物のようになり、体の立体構造の骨組みになって、体重を支えて、柔軟な動きを実現しているのです。
骨、皮膚、腱、歯、血管、臓器など、コラーゲンが形あるものを形成しているといっても大げさではありません。
コラーゲンは細胞と細胞をつなげたり、細胞が体の組織にしっかりとくっついておくための接着剤としても働きます。
コラーゲンは細胞と細胞のすきまを埋めるように存在しています。逆に言うと、細胞が多数集まっているところには必ずコラーゲンがあります。
ガンの転移にも関係しています。ガンが転移すると、あちこちがガン化してしまい手のつけようがなくなります。ガン細胞が転移するということは、体の接着剤の働きがおかしくなったことを示します。また、膠(にかわ)として昔から接着剤に使われていました。
侵入する異物や、体内で不要な物を食べてしまう、マクロファージはコラーゲンと結合すると活性が100倍に上昇します。
マクロファージを取り出して二つに試験管に分けます。片方にコラーゲンを与えてみます。そこに培養したガン細胞を入れてみると、コラーゲンを入れたマクロファージのほうが100倍も、ガン細胞を食べる作用を高めていました。
また、リンパ球や免疫グロブリンに関しても、コラーゲンと結合してパワーアップするのです。
試験管内で細胞を増殖するには細胞が培養皿に接着する必要があります。その時にも細胞の種類にもよりますが、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンが活躍してくれます。
足場の状態は細胞の増殖に影響を与えます。培養皿をコラーゲンでコーティングすると、細胞は定着、安定して活発に増殖するようになります。コラーゲンをゼリー状に固めた中に、細胞を埋めて増殖させる場合は、コラーゲンの密度を高くすると細胞活性も上がります。
この時に、ビタミンCも加えると、細胞はコラーゲンに接着して立体的に増殖して、培養皿からあふれるようになります。
宇宙空間にいたり、寝たきりの状態が長く続くと、骨などが弱くなります。これがコラーゲン線維などの萎縮に関係しているのかは確かでありませんが、運動したり、力学的な作用を及ぼすことが腱やその他の力学的支持体、伝搬体の強度を維持する上で必要と言えます。
生体組織は絶えず新陳代謝して、組織の強度を保っています。つまりこの場合において力がかかってくると強度を増す方向に生体反応が進むようになって、この力学的強度を検知しているのがコラーゲンと結合した細胞であると考える事ができます。つまり細胞がコラーゲンの合成のバランスを保つように働いています。
コラーゲン内で線維芽細胞を培養するときに、コラーゲンを引張った状態でないと細胞はコラーゲンを合成しないことがあります。
コラーゲンは細胞の外に存在していますが、細胞の外にはコラーゲン以外にも様々な高分子物質があり、コラーゲンや細胞表面を含めて複雑に相互作用しています。この細胞の外の高分子物質の集合体のことを細胞外マトリックスと言います。
細胞外マトリックスの成分は主成分のコラーゲン、種々の糖タンパク質、種々のプロテオグリカン、エラスチン、ヒアルロン酸等があります。
「マトリックス」の語源には「何かを生み出す場所」「母体」という意味がありますが、この場合には細胞の活動する場と言えそうです。
動物においては細胞の外にコラーゲンが存在しますが、植物にはコラーゲンはありません。
植物においてコラーゲンの役割をしているのが、セルロースを主体とした細胞壁になります。この細胞壁には植物により、コラーゲンに特有のヒドロキシプロリンというアミノ酸が存在しています。偶然の出来事かどうかわかりませんが興味深いことです。
海草の一種である天草からは寒天がとれたり、ゼリーによく似ていますが、コラーゲン=動物性線維のゼリーとは別物になります。
Last update:2023/4/19